金融デリバティブに関して、判例をご紹介します。
商品を購入した当時,80歳の女性で,夫とは既に死別していました。外で働いた経験はありませんでした。商品を購入した当時,夫が遺した自宅において,息子夫婦と孫2人と一緒に生活していました。
運用資金としては,定期預金合計1260万円と貸付信託30万円がありました。いずれも,今回の商品を購入した信託銀行に対するものです。その他普通預金が約170万円あり,収入は年額150万円の年金のみでした。
上記の貸付信託程度でした。
中央三井信託銀行
日経平均株価の動向によって,購入者の得られる利益が変動する投資信託
顧客は,投資信託の購入を勧誘した信託銀行の担当者の勧誘方法が適合性原則や説明義務に違反する違法なものであったと主張して,被った損失及び弁護士費用の合計428万8680円の支払いを求めて提訴しました。
顧客は信託銀行に対し定期預金等を預けていたので,平成18年6,7月ころ,担当者が挨拶のため顧客の自宅を訪問しました。
上記自宅訪問の際,顧客が担当者に対し定期預金の利率が低いと述べたので,担当者は,日を改めて顧客の自宅を訪問し,「プレミアム・ステージ」という「ノックイン型投資信託」を紹介しました。
顧客は,担当者の説明を聞いて,担当者に対し,定期預金等を解約して,上記商品を購入したいという希望を伝えました。
その後,同年7月末から8月末にかけて,顧客は上記商品を合940万9817円分購入しました。
上記商品は,日経平均株価の動向によって,購入者の得られる利益が変動する投資信託でした。平成18年7月以降,日経平均株価が上昇したため,顧客は,平成19年8月までに,購入額に比べて45万5520円多い償還金を得ることができました。
顧客は,この償還金を原資の一部として,再び同じ商品を合計1090万円分購入しました。
顧客が商品を購入して以降、日経平均株価が下落したため,顧客は,購入額に満たない償還金及び利息しか受け取れず,384万6390円の損失を被りました。
裁判所は,担当者が顧客に対しこの商品の購入を勧誘したことは,適合性原則に反する違法なものであったと判断しました。
裁判所は,判断の理由として,
(1)商品が高リスクな商品であったこと
(2)原告がそのような高いリスクがあることを十分理解して商品を購入したとはいえない
ことを挙げています。
裁判所は,
裁判所は,顧客について、
を理由に,顧客の知識能力等に照らせば,自らの責任で投資するか否かの判断が可能であるといえる程度まで商品の高いリスクを認識していたとはいえないと判断しました。
もっとも,裁判所は,商品を購入したことについて,顧客にも相当大きな過失があった(8割)として,損害額のうち2割のみの賠償を認めています。裁判所は,その理由として、
信託期間 | 平成19年7月31日~平成22年7月23日 |
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手数料 | 2.1% |
投資対象 | 日経平均株価の値動きによって償還条件が決定される仕組みのJ.P.モルガン・インターナショナル・デリバティブズ・リミテッドが発行するユーロ円債等 |
償還条件及び償還額 | ① 毎年2回の株価判定日における日経平均株価の終値が,スタート株価(平成19年7月31日~平成19年8月6日までの5営業日の日経平均株価の終値の平均値)以上である場合 ⇒直後の決算時に早期償還するものとし,この場合においては,原則として1万口あたり元本確保(1万円)及び当該決算時の目標分配額(第2期(1年目)は330円程度,第3期(2年目)以降は50円程度)を加算した額とする。 ② 早期償還せず,かつ平成19年8月10日~平成22年6月30日(「株価観察期間」)の日経平均株価の終値が,スタート株価に対し一度も30%以上下落(「ノックイン」)しなかった場合 ⇒約3年後の償還時に,原則として1万口あたり1万0050円程度で償還する。 ③早期償還せず,かつ株価観察期間中の日経平均株価の終値がスタート株価に対し一度でも30%以上下落した場合 ⇒ 約3年後の償還時に,原則として1万口あたり,エンド株価(平成22年6月30日の日経平均株価の終値)のスタート株価比(ただし100%を上限とする)に1万円を乗じて得た額に50円程度を加算した額とする。 |